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第33話
「ぬおおぉぉ!」
そのランゴバルトの雄叫びが聞こえた。自分の身体より遥かに大きなイノシシを押し返し、長戟を振り回して胴体を串刺しにしようとする。
回した長戟が獣の腹部を斬り裂いた。だがイノシシはそれでは怯まず、前方に大きく首を振ってランゴバルトを高く打ち上げた。
吹っ飛ばされたランゴバルトは空中で体勢を立て直すと、落ちていく重力を利用して長戟を首に突き立てた。
「ガァァアァァ!」
これで決まったかと思ったが、さすがに大イノシシはしぶとかった。刺さった長戟をものともせず、ランゴバルトを振り落とし、こちらに突進してきた。
「くっ……!」
急いで横に跳んで避けたが、胸部に鈍い痛みが走って、思ったより距離がとれなかった。どうやら大木に叩きつけられた時に肋骨が折れてしまったようだ。
――まずい……!
誰か援護して欲しかったが、他の戦士はランゴバルトに遠慮してか、手を出そうとしない。安全な場所で静観しているだけだ。
どいつもこいつも……と怒りを覚えたものの、助力を請えないのでは仕方がない。アクセルはヒビの入った小太刀を構えつつ、なるべくイノシシから距離を取ろうとした。
だがその時、イノシシの足元に白くて小さな生き物がいるのが見えた。
――あの子うさぎ……!
右足に布が巻かれている。先程助けたアイツじゃないか。何故こんなところにいるんだ……!
いや、そんなこと言っている場合じゃない。このままじゃイノシシに踏み潰されてしまう。
アクセルは無我夢中でイノシシの足元にスライディングし、子うさぎを拾って自分の胸元に突っ込んだ。そして股の間をくぐり抜けながら、イノシシの心臓部に小太刀を突き刺した。
「ギャァァァ……!」
首と心臓を刺された大イノシシは、断末魔の雄叫びを上げた後、ゆらりと巨体を揺らめかせ、どっ……と地面に頽 れた。
危うく下敷きになるところだったが、すんでのところで抜けられてよかった。
「……ちっ」
ランゴバルトが倒れた大イノシシに近づき、足で踏みつけながら長戟を引き抜く。
だが武器を手にした途端、彼は突然こちらに刃を向けてきた。
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