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第39話

「ごめんごめん。でも、ああでもしなかったら、お前は私に会えただけで満足してしまっただろう?」 「え……?」 「あそこで私に歓迎されていたら、お前は多分こんなに頑張ってなかったよ。四ヶ月で五〇位以内に上がることもなかったはずだ。違う?」 「それは……」  言われてみればそうかもしれない。  兄の仕打ちに我慢できなかったから、何とか振り向かせてやろうと無我夢中で鍛錬に打ち込んだのだ。あそこで優しくされていたら、こんなすぐに出世することはなかった。 「ランキングの隔たりは、お前が思っているより大きいんだよ」  フレインはアクセルの前髪を指で掻き分けた。 「上位ランカーと下位ランカーじゃ住む場所も違うし、そもそも実力が全然違う。この差が埋まらなければ自由に会うこともできないし、本気で死合うこともできない。せっかくヴァルハラに来たのに、そんなのつまらないじゃないか」 「…………」 「だからあえて突き放した。お前には、私と互角にやりあえるくらい強くなって欲しかったからね。私のところまで這い上がって来てくれるまでは、甘やかすのはやめようと思ったんだ」 「……じゃあ、四十八位なら合格ってことか?」 「んー、もう少しかな。どうせなら七位以内に入って欲しい。私と肩を並べたいなら、それくらいになってもらわないとね」 「……ふっ」  思わず笑みがこぼれた。アクセルはぎゅっと兄に抱きつき、呟くように言った。 「兄上は意地悪だな……」 「意地悪な私は嫌い?」 「……そういうところも、意地悪だ」  でも嫌いにはなれない。生まれた時からずっと憧れ、愛している。  今はまだ未熟だけど、少しでも兄に近づけているのなら、ここまで努力してきた甲斐があったかもしれない。 「アクセル」  不意に名を呼ばれ、何かと思って顔を上げた。目と鼻の先に兄の美顔が見えた。

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