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第40話
「! っ……ん」
唇に柔らかいものが触れ、一瞬呼吸が止まる。突然のことで頭が真っ白になり、身体も硬直して動けなくなった。
アクセルが目を見開いている間に、兄の唇は離れていった。
「四十八位まで頑張ったからね、ご褒美だよ」
にこりと微笑んで、兄が言う。
「……あ、それとも、もっと別の物の方がよかった? これじゃ物足りない?」
「そっ……」
一気に頬が熱くなり、恥ずかしくなって目を伏せた。
こんなところで不意打ちのようにキスされるとは思っていなかった。いきなりすぎて、ちゃんと味わっている余裕もなかった。
せっかく兄から口付けてくれたのに……。
「あの、兄上……」
彼の肩に手を置き、顔を俯けながら言った。
「その……よければ、もう一度だけ……」
「おや、おねだりかい?」
「……だ、だめなら、いいんだが……」
「ふふ、いいよ。可愛い弟のおねだりには、ちゃんと応えてあげないとね」
「んっ……」
フレインの唇がもう一度重なってくる。薄そうな見た目と違い、兄のものは意外とふっくらしていて心地よかった。
――ああ……兄上……。
兄の温もりを感じる。頬に呼気が当たり、生きている相手であることが伝わってくる。血と涙の味ではなく、甘美で切ない味がした。
ああ……これじゃ、ますます兄上のことを好きになってしまう……。
「っ……んんっ!?」
唇を離そうとした瞬間、後頭部に手を添えられ、より深く口付けられた。下唇に噛みつかれ、怯んだところに舌を差し込まれ、敏感な粘膜を舐められた。
「んっ、んっ! ん、ふ……う」
どうしていいかわからず、兄の服を掴んで縋りつく。逃げ回る舌を引きずり出され、歯列をなぞられ、甘い唾液をたっぷり注ぎ込まれる。
巧みなキスに翻弄され、アクセルは文字通りその場で溺れそうになった。
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