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第43話

「なるほど、久々にスリル満点の宴になるわけか。それはワクワクだね」  フレインが愉快そうに笑う。意味がわからなくて、アクセルは兄に尋ねた。 「兄上、ユーベル様の『(つるぎ)の舞』はそんなにヤバいのか?」 「うん、ヤバいくらい楽しいよ。お前は初めてだろうから、斬られないように気を付けなさい」 「……斬られるのか? 死合い中でもないのに?」 「斬られるよ。一度見てみればわかるさ」  そんなに危ない舞なのか。ランゴバルトといい、ユーベルといい、ランキング上位者は変わった人が多いようだ。 「脚、もう治ったかな」 「っ……!」  兄がいきなり太ももを揉んできたので、反射的に変な声が出そうになった。ジークに見られていたので、すんでのところで堪えた。 「ちょ、兄上……そこは怪我してない……」 「あはは、ごめんね。お前、いい脚してるからつい触りたくなっちゃって」 「はあっ!? そんなの一度も言われたことないぞ?」 「うん、今初めて言った。でも昔から美脚だなって思ってたよ」 「美脚って、あのな……」  ……兄・フレインも例に漏れず、少々変わっていると思う。 「というわけで、なるべく早く手伝いに来てくれよー! 宴は夕方から始まるからなー!」  そう言ってジークは岩場から立ち去ってしまった。  ……というか、こんな風にイチャついている自分たちを見ながら、それでも平然と事務連絡できる彼も変わっているかもしれない。 「それで……真面目な話、もう怪我は大丈夫?」 「え? ああ……」  抉れた脇腹や斬られたふくらはぎに意識を戻す。いつの間にか痛みはなくなっており、きちんと両脚が動く感覚があった。  兄がようやく腕を緩めてくれる。 「どうやら大丈夫そうだね。残念だけど、そろそろ行かないとだめかな」 「ああ、そうだな……」  二人で一緒に泉から出た。せっかくの二人きりの時間が終わってしまうと思うと、少し名残惜しくもあった。

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