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第54話

「もう……勝手に帰らないでくれよ」 「なんで? 住んでる場所、全然違うのに」 「それはそうだが……でも、せっかくだからもう少し……」 「ふふ、それはアフターのお誘いかな?」 「……アフター?」 「おっと、ごめん。アクセルはこういうことに疎いんだったね」  ……やはり、図書館でそういったことを少し勉強してくるべきだろうか。 「でもまあ、今日はいろんなことがあったしね。お前も疲れただろう? 早めに帰って休んだ方がいいよ」 「…………」 「じゃあ、そこまで一緒に帰ろうか」 「……ああ」  別れるのが名残惜しくて、わざとゆっくり歩いた。頭上で瞬いている星が綺麗だった。  ――早く一緒に暮らしたい……。  人間だった頃と同じように。好きな人とひとつ屋根の下で生活するというのは、素朴ではあるけれど幸せの基本だと思う。  だが、それにはもっとランキングを上げなければならない。 「兄上……」  別れ際、アクセルは兄にひとつお願いをした。 「その……もしよかったら、今度『狂戦士モード』を教えてくれないか?」 「狂戦士モード?」 「ああ。これ以上ランキングを上げるには、狂戦士モードを身につけないといけないから……」 「まあ、確かに上位ランカーで『狂戦士』になれない人はほとんどいないかな」  兄は顎に手を当てて、ちょっと考える素振りをしてから言った。 「じゃあアクセル、今度特別訓練にでも参加するかい?」 「特別訓練?」 「うん、『狂戦士モードあり』の実践訓練なんだけど。参加できるのはこれまた五〇位以上のランカーのみだから、お前ならギリギリOKじゃないかと……」  兄の言葉が全て終わらないうちに、アクセルはその手を握り締めた。 「する! 絶対参加する! それ、いつやるんだ?」 「ええと、確か次は三日後……いや、四日後だったかな? 忘れちゃった」 「ちょ……そこ大事なところだろ」 「ごめんごめん。じゃあ訓練前に声かけに行くよ。それならいいでしょ?」 「ああ、願ったり叶ったりだ」  訓練に参加できる上、兄に迎えに来てもらえるならこんなに嬉しいことはない。またひとつ楽しみが増えて、アクセルは笑みをこぼした。

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