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第56話
兄・フレインが足を止めたのは、いつもの鍛錬場とは違うドーム型の会場だった。棺が並んでいるオーディンの館のすぐ裏手にある場所だ。
見たことはあるが、アクセルは入ったことがない。
中に入ると、そこには既にランキング五位のジーク、それと他二名の戦士が待っていた。顔見知りではないが、彼らもランキング上位者ではないかと思われる。
「今日のメンツはこれで全部かな?」
「いや、ミューがまだだ。また寝坊してんのかもしれん。あいつがいないと今回の訓練成り立たないんだけどな」
「ありゃ、そうなのか。あの子も相変わらずフリーダムだね」
……兄上が言えた台詞じゃないけどな、と心の中でツッコむ。
――それにしても、ミューってどういう武器を使うんだろう。
あの身長と体格だったら軽くて小回りが利く武器だと思うが、もし短剣一本でランキング一位まで上り詰めたのだとしたら、それはそれで驚きだ。
「おはよー」
一人であれこれ考えていると、のんびりしたボーイソプラノが聞こえてきた。
見れば、ミューが軽く手を振りながらこちらに歩いてきた。宴の時とさほど変わらない軽装だが、背中に死神の武器のような巨大な鎌を背負っている。
――いや……明らかに身長超えてるだろ、あの鎌……。
一体どうやって振り回すつもりなんだ……と思っていると、ミューがぱっと顔を輝かせた。
「あ! アクセルだ! おはよー! きみも参加するんだね。よろしくー」
「あ、ああ……うん、こちらこそ」
「そっか。アクセル、強くなりたいって言ってたもんね? 訓練は厳しいかもだけど、狂戦士モード身につくといいね!」
「ありがとう……頑張るよ」
見た目とのギャップはともかく、小さい子に応援されるのは当たり前に嬉しかった。歳の離れた弟にエールを送られているような気分だ。
いや、実年齢は全然違うのかもしれないが……。
「よーし、じゃあそろそろ訓練始めるぞー」
ジークが待ち合わせ場所で声を張り上げる。集まっていた戦士たちが一斉に彼に注目した。
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