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第57話※
「今回は死合いみたいな一騎打ち形式じゃなく、ミューを敵と仮定した総当たり戦にする。誰か一人でもミューに血を出させたらそこで終了だ。逆にミューは、五人全員を戦闘不能にさせたら終了。もちろん『狂戦士モード』は使用OKな」
なんだ、そのルール。アクセルは密かにぞっとした。
そこまでのハンデを設けないとミューには適わないのか。そんなにミューは強いのか。三位の兄、五位のジークがいても、傷をつけるのが精一杯なのか。
この小さな戦士は、一体どれほどの力を持っているのだろう……。
「わーい! ぼくが鬼だー!」
と、ミューが嬉しそうに万歳する。彼にとってはこの訓練も、遊び半分の「鬼ごっこ」にすぎないのか。五対一というハンデも、ハンデのうちに入らないのか……。
「緊張してる?」
と、兄が顔を覗き込んでくる。余程硬い表情をしていたのか、軽く頬をつねられた。
「大丈夫だって、これはあくまで訓練なんだから。お前は全力でミューに斬りかかればOKさ」
「ああ……そうだよな……」
「そうそう。見た目子供だからって油断してると、一瞬で首を刎ねられちゃうから気をつけて」
「……わかった」
兄がそう言うのだから、遠慮することはないのだろう。せっかくの特別訓練だ、こんな機会はなかなかない。ちゃんと「狂戦士モード」を身につけて帰らなくては。
「じゃ、今から十秒後に始めるぞー。ちなみに抜刀は訓練開始の合図があってからな」
カウントダウンが始まる。アクセルは小太刀の柄を握り、いつでも抜刀できるように身構えた。
七……六……五……。
「アクセルと鬼ごっこできるなんて、ぼく嬉しいよ」
「……!」
「めいっぱい楽しもうね!」
ニィッとミューが笑ってくる。
だが、カウントがゼロになったのと同時に彼の姿が消えた。瞬きする間もなく、二つの首が宙を舞った。一緒に参加していた二人の戦士が、開始早々死神の鎌の餌食になった。
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