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第60話(アクセル~フレイン視点)

 ――これが狂戦士(バーサーカー)か……!  アクセルは久々に感動した。  なんて楽しそうなんだろう。見ているだけでウズウズしてくる。俺もあんな風に戦いたい。あの高みに到達したい。彼らが――兄上が共有している感覚を、俺も一緒に味わいたい。  俺が狂戦士になれたら、ああやって兄上と派手に死合うことも……! 「ふ……ふ……っ」  熱い息を吐きながら、アクセルは両手の小太刀を構えた。  血がたぎる。興奮する。戦士としての本能が(くすぐ)られる。狂戦士ならではの感覚を、この身にも是非……! 「シャアァァァアッ!」  雄叫びを上げ、アクセルはミューに飛びかかった。何故かいつもより身体が軽かった。 「おー! アクセルも狂戦士(バーサーカー)になったー! 訓練初体験なのにすごいー!」 「……!」  そうか、これが狂戦士なのか。なんだか知らないが、自分にもできたみたいだ。 「ふふ……くははは!」  楽しい。自分の思い通りに身体が動く。相手の動きが全てクリアに見え、痛みがないから斬られるのも怖くない。全身の血が沸騰し、永遠に戦っていられる気がする。  最高の感覚だ。なんて気持ちいいんだろう。今までに味わったことのない快感だ。もっと味わっていたい。もっと、もっと。 「アァァァア!」  アクセルは無我夢中で武器を振るった。自分以外の人間が全て敵に見えてきた。 ***  敵味方関係なく武器を振るい始めた弟を見て、フレインは眉をひそめた。  ――これはマズいかも……。  狂戦士になれたのはおめでたいが、それをコントロールできなければ意味がない。「狂戦士」と「獣」は紙一重だ。快感に呑み込まれて我を忘れてしまったら、「戦士失格」の烙印を押されてしまう。  それは絶対に阻止しなければ。 「おーい、アクセル!」  フレインは弟の武器を受け流しながら、彼に呼びかけた。 「興が乗るのはわかるけど、やりすぎはだめだ。それじゃ獣一直線だよ。戻ってきなさい、アクセル!」 「ハアァァァッ!」 「……だめだ、こりゃ。全然聞こえてないね」  自分が呼びかければなんとかなると思ったのだが。どうやら狂戦士のまま完全に我を忘れているようだ。

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