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第67話
ごまかすように、アクセルは話題を変えた。
「それよりユーベル様、兄を見かけませんでしたか?」
「フレインですか? さあ、今日は見ていませんねぇ。彼、時間がある時は散歩したり昼寝したり……割と気まぐれに過ごしていらっしゃるので」
「そうですか……ありがとうございました」
兄の行方はここでも掴めなかった。本当に彼はどこに行ってしまったんだろう。やはり直接家を訪ねてみるしかないかもしれない。
そう思って図書館を離れようとしたのだが、
「お待ちを」
再びユーベルに呼び止められてしまった。
「……何でしょう?」
またもやじろじろ眺められて、何事かと思う。服装に関しては先程ジャッジされたのに。
「しかし、いつ見てもスタイル抜群ですねぇ。程良く引き締まって肉付きもいい。脚も長いですし、特にこの太もものラインなんか最高です」
「は、はあ……どうも……」
「それだけに、今のあなたは実にもったいない。ちょっと服装を変えるだけで、もっと魅力的になれるのに。フレインも惚れ直すと思いますよ」
「……え」
最後の言葉につい反応してしまった。
――確かに、兄上の隣に立つからにはそういうのも身につけた方が……。
アクセルの目から見ても、兄・フレインは優美で洗練された雰囲気がある。それなのに弟がいつまでも野暮ったいままでは、横に並んだ時に釣り合いがとれないだろう。
自分はどう見られてもかまわないが、兄には恥をかかせたくなかった。
するとユーベルが妙な誘いをかけてきた。
「どうです? あなたもユーベル歌劇団に入りませんか?」
「……ユーベル歌劇団?」
「わたくしが結成した歌劇団です。ヴァルハラは歌や踊り等の娯楽が少ないですからね。提供してくれないのなら、いっそわたくしで作ってしまおうと思ったわけです」
「は、はあ……そうですか」
「歌劇団では歌や踊りの他に、さまざまな美や教養を学べます。あなたも優美で洗練された紳士になりたいのであれば、わたくしが手取り足取り教えて差し上げますよ。いかがです?」
「え、ええと……」
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