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第70話
「昼間の訓練では申し訳ないことをした。本当にすまない。ごめんなさい」
「あ、うん。それはいいんだけど……」
「よくはない。戦いの快楽に呑まれて我を忘れた挙げ句、あなたを殺めてしまうなんて……」
「そんなに気にしなくても。初心者ならあれくらいの暴走、よくあることだし。それにほら、私だってお前を殺したことあるじゃない?」
「死合い中はいいんだ。お互い覚悟を持って斬っているから。でも、意図せず相手を斬ってしまうのはただのミスだ。俺が未熟だという証拠だ」
「…………」
「すまない、兄上……出来の悪い弟で」
斬ること・斬られること……それがどういうことかは、わかっているつもりだ。
武器を振るうということは、相手を傷つけることである。だからこそ自分の力は自分でコントロールできなければならず、戦闘中に我を忘れて暴れ回るような人は戦士失格なのだ。
今回はヴァルハラでの出来事だったからまだいいが、これが下界で起こっていたら取り返しのつかないことになっていた。一番大切な人を自分の誤りで殺してしまっていた。
そう思えば思うほど、自分の罪の重さがのしかかってきて胸が潰れそうになる。
「……お前は真面目だね。そしてとても優しい」
兄が土下座しているアクセルの前に膝をつく。そして優しく髪を撫でながら言った。
「その気持ちがあれば、同じ間違いは二度と犯さないさ。次はきっと大丈夫だよ」
「兄上……」
「まあ、この話はこれくらいでいいか。……それで、本題は?」
「……へ?」
いきなりそんなことを言われ、アクセルはぽかんと顔を上げた。兄の意図しているところがよくわからないのだが。
「本題って……何のことだ?」
「あれ? 他にもっと言いたいことがあるんじゃないの?」
「他に? いや、俺はただ兄上に謝りたかっただけなんだが……」
「……えっ? 話ってそれ?」
すると兄は拍子抜けしたようにぺたんと床に座り込んだ。そして何がおかしいのか、急にケラケラ笑い始めた。
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