72 / 2003

第72話*

「俺は、その……こういうことは全くの初心者だから、ちゃんと相手ができるかどうかわからないぞ……?」 「そんなの気にしなくていいんだよ。むしろ、何もかも初めての方が燃えてくるかも」 「そうなのか? でも……」 「お前の初めてを奪うのは私。こればかりは誰にも譲りたくない」 「っ……」  身体の芯がずきんと疼いた。心拍数が大きく上昇し、まだ何もされていないのに背筋が甘く痺れてくる。今からこんなにドキドキしてて、俺の心臓は最後までもつのかとやや心配になった。 「じゃ、こっちにおいで」  隣の寝室につれて行かれ、ベッドの上に座らされる。長い腕で抱き締められながら、こめかみや頬、首筋――もちろん唇にも、優しくキスを落とされた。  そんなことをされているうちにだんだん力が抜けてきて、アクセルはぼんやり兄を見つめた。何故かはわからないが、いつもおっとりしている兄が今日は少し男性的に見えた。 「兄う……んっ」  唇を塞がれつつ、後ろに倒される。割れ目から舌を差し込まれ、驚いてぴくりと肩が震えた。遠慮なく侵入してくる舌が上顎を(ねぶ)り、こちらの舌を追いかけて引きずり出そうとしてくる。 「んっ……んん、う……」  今度は怯むまいと兄の服を掴み、舌を押し返した。瑞々しく柔らかな粘膜が擦れ合い、互いの唾液が混ざって口角を伝い落ちる。だんだん身体も熱くなってきて、自分の中心も徐々に反応してきているのがわかった。 「はっ……あ……」  ようやく濃厚なキスが止み、アクセルは大きく胸を上下させた。口を吸われている間は息ができない。もっと経験を積めば呼吸できるようになるのかもしれないが、今の自分には難しい。  すると兄が真上からこちらを見下ろしてきた。そして艶っぽい笑みをこぼしながら言った。

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