80 / 2213

第80話*

「…………」  正直、アクセル自身も何故嫌だったのかわかっていなかった。もっと言えば、本当に嫌だったのかもよくわからなかった。もしかしたら、挿入を期待していたところに予想外のことをされたから、少しパニックになっただけかもしれない。 「……兄上」 「うん?」 「その……こういうことに慣れたら、いつか……もう一度……」  目を伏せながら小さく呟いたら、兄はくしゃ、と頭を撫でてくれた。 「そうだね、じゃあまた今度。お前がセックス大好きになったら、もっといろんな遊びをしてみよう」 「み、身も蓋もない言い方を……」 「でもその通りでしょ? これからはストレス発散も兼ねてちょいちょい誘ってあげるね」 「っ……」 「あ、もちろんお前から誘ってくれてもOKだよ。お前の家にお泊りするのも楽しそうだし。今度、夜這っていいかな?」 「兄上……っ」  顔を赤らめ、兄の言葉を遮った。本当にこの人の台詞は、聞けば聞くほど恥ずかしくなってくる。本気か冗談か定かではないが、アクセルにとっては耳元で淫語を囁かれているのとほぼ同じだった。 「さて、そろそろいただこうか」  下着と一緒にスラックスを脱ぎ、シャツも頭から抜き去って、いよいよ兄も全裸になった。その中心で、雄々しく反り立った男性器が赤黒く光っていた。  ――これが兄上の……。  思わずこくりと喉が鳴る。想像よりも随分大きいが、果たして全部入るのだろうか。これが入って来たら、俺は一体どうなるんだろう……。  興奮と不安でドキドキしていると、兄がニッ……と薄く笑った。鋭い犬歯がチラリと見えた。 「ねえ、せっかくだからお兄ちゃんが挿っていくとこ見てて」 「えっ……!? でもそれは……」 「お前と私が初めてひとつになるんだよ? そんな大事な瞬間を見ないなんて、もったいなさすぎるでしょ」 「う……」  確かにそうかもしれないが、なんだか上手い具合に丸め込まれているような気も……。 「……わかったよ」  仕方なく後ろに肘をついて上半身を起こし、恐る恐る下腹部に目をやった。兄の鋭い切っ先がぴたりと秘所に押し当てられていた。

ともだちにシェアしよう!