95 / 2002

第95話

 十一年前に死に別れ、ヴァルハラで再会するまで離ればなれだった。  しかも、目標を必死に追いかけていたアクセルとは違って、兄・フレインはひたすらじっと待ち続ける日々。ただ待つだけの十一年間は、気が遠くなるほど長かっただろう。  更に言えば、本当に弟がヴァルハラに来てくれるかは直前になるまでわからない。待っていれば必ず会えるというわけではない。結果的にはこうしてまた巡り会えたけれど、「もう会えないかもしれない」と考えたこともあるのではなかろうか……。 「兄上……」 「なに?」 「待たせた側が何言ってるんだと思うかもしれないが……その、よく十一年間も待てたな……」 「ああ、私はそこまで長かったとは思ってないから。いつの間にか十一年経ってて、気付いたらアクセルがこっち来てたって感じかな。歳をとると月日の経過が早くてね」 「……そういうものか? でも十一年間も待たせてしまったことには変わりないが……」 「結果的にこっちに来てくれたからいいんだよ。それで八割くらい私の夢は叶ってる」 「……夢?」 「うん、生前には叶わなかった私の夢さ」 「それは……?」 「そりゃあ、お前と対等になることだよ」  ああ、それか……と思った。これに関しては事あるごとに「ランク上げ頑張って」と言われていたので、今更驚きはしない。  が、自分の夢だと言い切るほど「対等であること」にこだわっているのは、いささか不思議な気もした。ランキングが多少離れていてもその気になれば想いは遂げられるのだから、相手が追い付くまで無理に待つ必要はないはずだ。  今は年齢も(肉体的には)同い年だし、そこまでこだわる理由がいまいちよくわからない。 「ふふ。アクセル、眉間にシワが寄ってるよ」  一人で考え込んでいたら、軽やかに笑い飛ばされた。 「私の夢、そんなに変かな」 「いや、全然変ではないが……兄上にしては随分こだわっているなと」  すると兄は、当たり前のようにサラッと言った。

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