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第96話

「だって、愛というのは対等な関係になってこそ価値があるものだろう?」 「えっ……?」 「人間はね、自分より何もかも劣っている相手に恋をすることはできないんだ。格下の者に注ぐ愛情はペットや装飾品を愛でているのと同じ。そんな愛なら私はいらない」 「…………」  ハッキリと言い切った兄に、なんだか清々しささえ感じた。アクセルのランクが上がるまで手を出して来なかった理由もようやくわかった。 「だからお前がヴァルハラに来てくれた時点で、私の夢は八割くらい叶ってるの。あとはちょっとランキングを上げるだけ。簡単でしょ?」  いや、そこまで簡単ではないのだが……と思ったが、ヴァルハラに来ることが一番難しいのは確かである。  ――兄上の夢が叶うかどうかは、全て俺次第ってことか……。  ならば全力で叶えて差し上げなくては。兄の夢は自分の夢だ。兄に追いつくことで兄の夢まで叶うなら、こんなに嬉しいことはない。 「兄上……俺、また明日から鍛錬に励むよ。だからあともう少しだけ……」 「うん、待ってるよ。いつまでも」  にこりと微笑んでくる兄。アクセルもつられて笑みを返した。 ***  そして夜。二人は同じベッドで眠った。  最初アクセルは床に布団を敷いて寝るつもりだったのだが、 「お前もこっちで一緒に寝ようよ」 「いや、でも……そのベッドに二人で寝たら狭いのでは」 「いいじゃない。くっついて眠れば」 「……まあ、そうなんだが……」 「それとも、アクセルは寝る時は一人の方がいい? 私の隣で寝るのは嫌?」  ……なんだろう、この断りにくい聞き方は。  ――いや、まあ邪魔でないなら一緒に寝るのもやぶさかではないが……。  結局アクセルは、誘われるまま兄のベッドに入ったのだった。 「ふふ、嬉しいな。弟と同じベッドで寝るの、夢だったんだ」  布団を被った途端、兄が身体をすり寄せてきた。アクセルは少しドキドキしながら聞き返した。

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