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第100話

 その男性はのっしりと店側に回ると、堂々と椅子に座り込んだ。 「ありゃ。この店、ケイジの店だったのかい?」 「左様。もっとも、この店は趣味のひとつだが」  そう言って、ケイジという男性が「温泉まんじゅう」をひとつ差し出してきた。 「『早起きは三文の得』と言う。初回だし、ひとつサービスしてやろう」 「わあ、ありがとう。いただくよ」  温かいまんじゅうを受け取った兄は、当たり前にそれを半分に割った。そして片方をこちらの口元に押しつけて、 「はい、半分」 「もぎゅ……」  無理矢理口の中に押し込んできた。ホカホカだったので火傷しそうになった。だがその熱さを除けば、品のいい甘さと皮の舌触りが絶妙にマッチしている。美味しい。  顔を綻ばせていたら、ケイジがひとつ料理アドバイスをくれた。 「それは菓子として食されているが、餡の代わりに肉を詰めれば『肉まん』になるぞ」 「肉まん、ですか」 「うむ。試してみるといい」  なるほど、確かにそれは美味しいかもしれない。家に小麦粉があったから、それを練って皮を作って、そこに肉のタネを入れれば……。 「時にフレイン。今朝がた発表されたランキングでは、ランキングが一気に降下していたのだが。何かやらかしたのか?」 「ええ!?」  衝撃の事実をケイジから聞かされ、アクセルの方が声を上げてしまった。驚愕して兄を見たら、当の本人はぽかんとした顔で首をかしげている。 「ありゃ、そうなんだ。今日ってランキング発表日だったんだね。忘れてたよ」 「ちょ……そうじゃないだろ兄上! すみません、ランキング下がったってどのくらい……?」 「七位だ」 「七……!? そんなに!?」 「なんだ、そんなのたいした問題じゃないよ」  焦っているアクセルとは対照的に、兄はひたすらのんびりした態度である。 「二位~七位のポイントはかなり僅差なんだ。ランゴバルトに気を遣う必要はあるけど、三位~七位はちょっとしたことですぐ入れ替わっちゃう。先月は訓練や死合いをサボったから下がっちゃったんじゃないかな」 「……はあ? 死合いをサボったのか?」 「だって下位ランカーと戦っても張り合いがないんだもん」 「兄上ぇぇ!」

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