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第101話
あんまりな言い草に、アクセルは兄の肩を掴んで揺さぶった。
「死合いをサボるとか何考えてるんだ! 俺たちはオーディン様の眷属 なんだぞ! 遊んでもいいが、最低限の責務は果たしてくれ!」
「そ、そんなに怒らなくても……」
「俺だってこんなことで怒りたくない! なんで十一歳も年上の兄上に説教しなきゃならないんだ!」
「ええと……ごめんね? 説教させちゃって」
「そう思うなら、これからはもう少ししっかりしてくれ! もし次にサボったらお泊まりもしないし、買い物にもつきあわないし、紅葉狩りにも行ってやらん!」
「ええ? それは嫌だな……」
「だったら、せめて死合いくらいは……」
「御両人。兄弟喧嘩は結構だが、店先であまり騒がないでくれるか」
ケイジの声でハッと我に返る。大きな声を出したせいか、周りの人が皆こちらに注目していた。
「し、失礼しました……! 兄上、行くぞ」
バツが悪くなり、兄の腕を引っ張ってその場から立ち去る。これ以上買い物する気にもなれなかったので、そのまま兄の家に戻った。
買い物籠をキッチンに持って行き、むっつりと食材を整理していると、兄が横から話しかけてきた。
「アクセル、まだ怒ってるの?」
「……別に。兄上がいい加減すぎるから呆れているだけだ」
「私がいい加減なのは認めるけど、そんなに怒ることかな……。さっきも言ったけど、三位も七位も実力的には変わらないんだよ? それに、私のランクが下がったところでお前には直接関係ないじゃない」
「関係あるんだよ!」
ついまた怒鳴ってしまい、自分でも「しまった」と思った。感情にまかせて声を上げるとロクなことがない。
深呼吸して気持ちを落ち着かせ、ようやく続けた。
「……いや、すまない。確かに直接は関係ないな。兄上が死合いをサボろうが何しようが、俺には関係ない……その通りだ」
「…………」
「でも俺は、兄上がランクダウンするところなんて見たくない。そりゃあ、時には調子が悪くて下がることもあるだろうが……」
また怒鳴りそうになるのを堪え、低い声で言う。
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