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第102話

「だが……下がった理由がただのサボりだったから、すごく腹が立った……。兄上が適当な性格なのは知っていたが、さすがに死合いをサボるとは思っていなかったからな……」 「…………」 「……まあ、これも俺の勝手な思い込みだ。兄上には関係ない。忘れてくれてかまわないさ」  結局最後は拗ねた言い回しになってしまった。大人げないと思いつつも、他の言い方が思い浮かばなかった。  口を尖らせながら朝食の準備をしていたら、兄が後ろからそっと腕を回してきた。背中からぎゅっと抱き締められ、うなじに頬をすり寄せられる。 「……ごめんよ、私が悪かった。今月は真面目に戦う。三位に戻れるよう頑張るから」 「本当か?」 「本当だって。これ以上弟をがっかりさせたくないしね」  首をひねって振り返ったら、宥めるように軽くキスされた。  にっこり笑って兄が言う。 「ご飯食べたら一緒に掲示板見に行こう。お前は何位まで上がったんだろうね。楽しみだな」 「……まったく、呑気な兄上だ」  これ以上怒ることもできなくなり、アクセルは苦笑しながら朝食を作った。食材をいろいろ買い込んでおいたので、昨日の夕食よりはいいものが作れそうだ。 「簡単なものでいいよ。なんなら、シリアルにミルクでもいいし」 「それじゃ死合いで戦えないだろう」 「大丈夫だって。私が本気で戦う相手とは滅多に当たらないからさ」 「……そうやって油断してると、足元すくわれるぞ」  兄の意見は無視して、アクセルは目玉焼きやサラダ、スープ、トースト等を一通り作った。朝食はしっかりとるのがアクセルの習慣だ。食事と睡眠をしっかりとるだけで、十分身体は丈夫になる。厳しい鍛錬に丈夫な身体は欠かせない。 「わあ……こんなちゃんとした朝食、何年ぶりだろ」  その発言を聞いて、一刻も早く兄と同棲しなければならないなと思った。この兄は、放っておいたらどこまでもだらしない生活をしそうで恐ろしい。

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