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第104話

 アクセルに抱きつきながら、チェイニーは兄・フレインに目を向けた。 「ところでフレイン様、今日死合い入ってますよ。行かなくていいんですか?」 「おや、ほんと?」  対戦表が書かれている掲示板を見上げる。チェイニーの言う通り、この後兄の死合いが予定されていた。相手は1000位代の戦士だった。兄と戦えるなんて羨ましいことだ。 「ありゃ、残念……。この後アクセルと山に狩りに行く予定だったのに」  ……そんな予定、今初めて聞いたのだが。  アクセルはやんわりと兄に釘を刺した。 「兄上。わかっていると思うが、くれぐれも死合いには……」 「大丈夫、ちゃんと出るよ。今月は頑張るって約束したもんね」  兄はにこりと微笑み、すれ違いざまにアクセルの肩をポンと叩いた。 「お前は今週見回り当番だね。頑張って」  あっさりとその場を離れていく兄。多分、死合いに向かったのだろう。見回り当番が入っていなければ観戦に行ったのだが。  兄の姿が見えなくなってから、チェイニーがこっそり話しかけてきた。 「……ねえアクセル。フレイン様って結構ヤキモチ焼きだったりする?」 「は? 兄上が? 何故?」 「いやね、にこにこしているようで目は全然笑ってなかったからさ」 「えっ……?」 「オレがアクセルに抱きついたから、嫉妬しちゃったのかな。意外と独占欲強いんだね、あの人」 「いや、そんなことは……」  あの兄が嫉妬? 友達に抱きつかれたくらいで? とてもそんな風には見えない。  ――というか、むしろヤキモチ焼きたいのは俺の方なんだが……。  アクセルがこっちに来てからは誰ともやっていない……なんて言っていたけれど、あの調子じゃいつまた男漁りに出掛けてしまうとも限らない。本当は常に見張っていたいくらいなのに、鍛錬や仕事が重なれば一緒にいることはできない。そこがまた歯痒い。  兄に追いついたら追いついたで、心配の種は減らないのかも……と思いつつ、アクセルは仕事に向かった。

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