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第105話(フレイン視点)
死合い会場の出入口で、フレインは軽く髪を掻き上げた。横目に、先程倒したばかりの対戦相手が運ばれているのが見えたが、何という名前だったかもう覚えていない。
今日の死合いは一瞬で終わってしまった。自分から動くのも面倒だったので、向かってきた相手にカウンターがてら抜刀したら、あっさりと首と胴体が離れてしまった。返り血も浴びず、ほとんど動くこともなくて、観戦している人もつまらなかったことだろう。
――やっぱり1000位程度じゃ相手にならないな……。
どうせ戦うなら、もっと楽しい死合いをしたいものだ。今のアクセルとならいい勝負になると思うのだが、こればかりは完全ランダムなので、当たることをお祈りするしかない。
まあ、ヴァルハラにいれば歳をとることもないし、いつか当たることを願いながら毎日楽しく過ごせばいいのだが……。
「よう、フレイン。お疲れさん」
「ランクは落ちても、腕は落ちていないようですね」
会場を出た途端、ジークとユーベルに声をかけられた。二人ともフレインより先にヴァルハラに来た先輩だが、今となっては気の置けない友人である。
ジークが開けっぴろげに言った。
「ケイジから聞いたぜ? お前さん、朝市で弟くんに説教されたんだって?」
「そうなんだよー。死合いサボったって言ったらすごい怒られちゃった。三位から七位なんて、そんなたいしたことないのにねぇ?」
「しかし、おかげでわたくしが三位に繰り上げです。どうですフレイン、弟くんと一緒にユーベル歌劇団に入りませんか?」
「おや、ユーベルはまだアクセルを狙ってるの? 口説いてもいいけど、ほどほどにしてね」
「承知しておりますよ。あなたを怒らせると蘇生すら許されなくなりますからね」
ユーベルがひょいと肩をすくめ、セミロングのストレートヘアをサラッと揺らす。
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