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第107話(フレイン視点)

 ――本当に「あっという間の十一年」だったなぁ……。  いつの間にか十一年経っていた……とアクセルには言ったが、あながち間違ってはいないと思う。ここまで治安を整えるのに、なんだかんだで十年近くかかってしまった。アクセルがヴァルハラを目指して頑張っている間、フレインもヴァルハラの整備に奮闘していたのだ。  その甲斐あって、今はごく当たり前の治安まで回復したわけだが……。  ジークが真面目な顔で言う。 「しかしフレイン、今週の見回り当番、あのウルフが入ってんだぜ? ヤバくね?」 「あー、ウルフね……。って、誰だっけ?」 「あなたは相変わらず人の顔と名前を覚えませんねぇ……。ウルフ、ビラク、ロシェはかつて問題児三人衆として有名だったではありませんか。我々の『問題児リスト』にもバッチリ載っておりますよ」  ヴァルハラが荒れていた時、問題を起こしていた派閥はたくさんあった。だが、大きなものを潰してしまえば弱小派閥は自然消滅、そうでなくとも問題行動が取るに足らない悪戯レベルだったりしたので、「問題児リスト」に記録するだけにして、後は放っておいたのだ。  ここ数年はこれといった問題も起きていなかったので、存在もすっかり忘れていたのだが……。 「なんでそんな人が当番になってるんだい? 見回りだけは品行方正な人が選ばれるはずだったのに」 「知らんよ。もう大丈夫だと認識されたんじゃないか?」 「大丈夫じゃないと思うけど。そういう人は絶対真面目に仕事しないよ」 「仕事しないだけならまだいいですがね。下手したら、また弟くんが貧乏くじを引く羽目になりそうです」 「あー……まあ、ね……」  顎に手を当てて思案する。  ジークもユーベルも、かつては粛清のために大勢の戦士を斬った。それはフレインも同様で、三人合わせると1000人を超えているんじゃないかと思う。

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