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第110話(アクセル~フレイン視点)
「五人しかいないんだし、ここは実力順に別行動しようぜ? あんたはランキングも上だから、この森を突っ切るルートでヴァルハラを一周してくれ。ちなみにオレはこっちの山道、残りの三人は市街地を巡回するってことで」
「……森を突っ切るのか? 普段は入らないことが多いが……」
「だからって、毎回スルーするわけにはいかないだろ? 落とし物も溜まってるかもしれないし。簡単でいいから、あんたがチェックしてきてくれ」
「そうか……承知した」
「よし、決まり! じゃあ早速この通りに見回りして行こうぜ!」
ウルフの掛け声と共に、四人の戦士がそれぞれのルートに向かって行く。
――まあ、手分けした方が効率もいいしな。
勝手にルートを決められていたのには違和感を覚えたが、やるべきことは変わらない。
アクセルはウルフの提案通り、森を突っ切るルートで巡回することにした。一人行動に全く不安がないと言ったら嘘になるが、緊急呼び出し用の鈴も携帯しているし、なんとかなるだろう。
そのまま街外れまで歩いて行き、一人で森の中に入っていく。
だから気付けなかった。アクセルと離れた途端、他の四人が呼び出し用の鈴を手放して勝手に解散してしまったことに……。
***
――うーむ、おかしいなぁ……。
ひとしきり街中をぐるぐる回ったところで、フレインは顎に手を当てた。
アクセルが見当たらない。見回りのルートはざっくり把握しているつもりなのだが、見回り当番とすれ違ったという話すら聞かない。はて、今日は違うルートで巡回しているのだろうか。それだと対処のしようがないのだが……。
「フレイン、やっほぉ~!」
どうしたものかと悩んでいた時、ミューが声をかけてきた。片手に大きな飴を持ちつつ、背中には巨大な鎌を背負っている。なんともシュールな格好だ。
「やあ、ミュー。散歩かい?」
「うん、ヒマだったからケイジの店に遊びに行ってたの。そしたらリンゴの飴をもらったよ。これ美味しいね」
ガリッとリンゴに齧り付くミュー。リンゴ型の飴なのかと思いきや、丸々ひとつのリンゴに飴がコーティングされているお菓子だった。これもケイジの祖国の食べ物なのだろうか。
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