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第111話(フレイン視点)

「ところでさ、さっき広場にウルフがいたよ。ビラクとロシェと何か喋って、すぐ別れてたけど」 「ああ、ウルフね……。彼、今週見回り当番らしいんだ。アクセルが一緒だから真面目に仕事してるのかな」 「ううん、アクセルはいなかったよ。ウルフだけだった」  それを聞いて、フレインは眉を(ひそ)めた。 「……それはおかしいな。見回りは五人で一緒が基本だろう? なんでバラバラに行動してるんだい?」 「ぼくに聞かれても。というか、ウルフは見回りしてるようには見えなかったけどなー。なんか二人と別れた後、酒場に向かってたし」 「酒場?」  ますます腑に落ちない。ウルフがサボっているのはわかったが、それでは他のメンバーはどこに行ったのだ? まさか他の人たちも一緒にサボっているんじゃないだろうな?  弟に仕事を全部押しつけて……。  ――まったくあの子は……一人で見回りしても終わるわけないだろうに。  きっとウルフにいいように言い含められたのだろう。アクセルは素直で優しいから、多少おかしいなと思っても「自分が頑張ればいいか」などと考えてしまう。  やれやれ……と首を振り、フレインは酒場に向かった。闇雲に歩き回るより、ウルフに直接弟の居場所を聞いた方が早いと思ったのだ。  ミューも「ヒマだから」とついて来てくれた。 「失礼するよ」  暖簾をかき分け、バーカウンターに座っていたウルフに声をかける。 「いい気分で飲んでいるところ、ちょっといいかな? きみに聞きたいことがあるんだ」 「ぐほっ、フレイン……! しかもミューまで……!」 「はーい、ぼくもいまーす!」  余程驚いたのか、ウルフは飲んでいたグラスワインを噴き出してしまった。 「オレに何の用だよ?」 「いや、弟がどこ行ったか教えて欲しいなと。今頃一人で見回りしてるだろうし?」 「それは嫌味か? サボってるのはオレだけじゃねぇよ。他の三人もだ。オレだけに言うんじゃねぇ」 「サボりを説教するつもりは毛頭ないよ。私は弟の居場所が知りたいだけだ。どこ行ったか、知ってるよね?」 「知らないね。森を突っ切るルートを提案はしたが、どう巡回するかは本人の勝手だからな」 「森を……?」  フレインは怪訝な顔で店の外を見た。

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