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第112話(フレイン~アクセル視点)
戦士たちが生活している市街地の隣には、深い森や山が広がっている。
上位ランカーはそこで狩りをしたりトレーニングをしたりするわけだが、その分危険が多いのが実状だ。山で大イノシシに襲われたのは記憶に新しいだろう(もっともあれは、ランゴバルトがわざとおびき寄せたのだが)。
「森かー。入ってすぐなら道もハッキリしてるけど、ちょっと横道逸れると崖とかあって危ないよね。一人で入る場所じゃないよねー」
ミューの言う通りだ。普通は最低でも二人以上で行く場所である。森に一人で入るなどとんでもない。
――本当にあの子は……。
真面目なのか無鉄砲なのか、それとも森の危険性を知らないのか。どちらにせよ、放っておくわけにはいかない。
「わかった、ありがとう。ミュー、行こうか」
フレインは酒場を飛び出し、森に急いだ。
途中の見回り集合場所に、未使用の「緊急呼び出し鈴」が置いてあるのを見つけた。しかも四つ。アクセル以外の全員がサボっているという証拠だ。
ミューが軽やかに笑い出す。
「あは、アクセルだけ頑張ってるんだ? 真面目だねー」
「うん、ちょっと真面目すぎるかな」
そう苦笑しつつ、フレインは呼び出し鈴をひとつ拾った。そして森の入口から奥に入っていった。
***
アクセルが森に入ってすぐ、一人の戦士が茂みの中でガサガサやっているのを見つけた。
鍛錬しているとも思えず、側に寄っていって声をかけた。
「どうしたんだ?」
「あ、いや……実は森で落とし物しちゃって」
顔を上げた男は、童顔でおとなしそうな人だった。
「探してるんですけど、見つからないんですよ。小さいものだからかな」
「何を落としたんだ?」
「それは、その……これくらいの石がついているペンダントです。母の形見なので、何としてでも見つけたくて」
これくらい、と指で二センチくらいの幅を作ってみせる男。そんな小さなものを森で落としたとなれば、見つけるのも容易ではないだろう。
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