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第115話
近くの石に腰かけ、天を仰ぐ。今日ものどかでいい天気だ。
――他の連中は、ちゃんと見回りしているんだろうか……。
してないかもしれないな、とぼんやり思った。見回り当番の手間と見返りを天秤にかければ、真面目に仕事する人の方が少ない。
それなら適当なところで切り上げて、後はサボってしまった方がいいのではないか。どうせたいしたペナルティーにもならないし……と考えるのが普通だ。
アクセルだって、こんなところにいるくらいなら思いっきり鍛錬したかった。兄の死合いを見に行きたかった。山に狩りに行くなり何なりしたかった。
でも「最低限の責務は果たせ」と兄を怒鳴りつけた手前、自分がサボるわけにもいかない。任された仕事はきっちりこなさなければ、示しがつかない。
もっとも、こうして崖の下で石に腰掛けているだけなら、サボっているのとほぼ同じなのだが……。
「まったく……」
仕方なくアクセルは、立ち上がって再び歩き始めた。あと一時間歩いて道が見つからなかったら鈴を使おう。みっともないがやむを得ない。これ以上は時間の無駄だ。
しばらく歩いたところで、砂利道が途切れて茂みが現れた。森への入口かもしれない。
ここから入れば、街の方に出られるだろうか。しかし中は意外と深いし、道がわからなかったら余計に迷ってしまう可能性が……。
その時、近くの茂みが小さく揺れた。小太刀の柄に手をかけて身構えたら、下から顔を覗かせたのは白いうさぎだった。
「……なんだ」
柄から手を離し、うさぎを眺める。
森や山を歩いて、うさぎやりす等の小動物に遭遇するのはよくあることだ。狩りの対象にはならないので、遠くから眺めてほっこりするだけの存在である。言うなれば、ちょっとした癒しだ。
すると、そのうさぎがトコトコとこちらに近づいてきた。
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