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第117話

 ――それにしても、街の隣なのに危険な森だよな……。  道がわからないというのもあるし、切り立った崖が危険というのもある。きっと見知らぬ獣も生息しているだろう。凶暴な獣に遭遇する前に、早いところ街に戻りたいところだ。  まあ、今回はわざとイノシシを誘き出すような真似はしていないし、何事もなく帰れると踏んでいるのだが……。 「……!」  その時、急にピピが耳を立てて足を止めた。先を歩いていたはずなのに、怯えたようにこちらに走ってきて足下で震え始める。 「……どうした?」 「ぴぃぃ……」  怪訝に思い、ピピを抱き上げる。身体を撫でてやっても、耳や尻尾を隠したまま丸く縮こまっていた。  どうもおかしい。一体どうしたんだろう。  怪訝に思って顔を上げたら、かなり遠くの方にチカチカ光る何かが見えた。それもひとつ、ふたつではなく、結構な数の光が見える。  ――あれは……!  間違っても蛍などの平和なものではない。あれは目だ。森の中で獲物を探し求めている獣の目だ。  群で行動し、かつうさぎが怯える森の獣など、一種類くらいしか思いつかない。  ――狼か……。  武器を構えるのと同時に、持っていた鈴を地面に叩き落とした。これで誰かが応援に来てくれるといいが、それまでは一人でなんとか持ちこたえなければならない。 「……ピピ、しばらくここにいてくれ」 「ぴー……」  アクセルはピピを胸元に突っ込むと、急いでもと来た道に引き返した。  森の中ではこちらが圧倒的不利だ。視界が悪い上、木々が邪魔をして上手く戦えない。崖下の砂利道の方がまだマシだ。  後ろから狼の群が近づいてくる。獰猛な気配が迫ってくる。  森を出てすぐのところで、アクセルは振り向きがてら小太刀を抜き放った。瞬間、茂みから狼が一匹飛び出してきて、こちらに牙を剥いてきた。  身体を低くしつつ、小太刀を立てて抜き身の刃を向ける。

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