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第118話※
「はっ!」
向かってきた勢いを利用しつつ、縦に刃を滑らせた。狼は眉間から尻尾にかけて真っ二つに裂け、血液や臓物を巻き散らして絶命した。
けれどこれで終わりではない。森から次々に狼が飛び出してきて、アクセルを取り囲もうとしてくる。
「く……」
アクセルは狼を斬り払いながら、崖に背を向けて立った。逃げ道はないが、三六〇度を囲まれるよりはいい。時間を稼ぎながら助けを待つのだ。
――十五匹くらいか……。
小太刀を両手に構えながら、目だけで様子を窺う。
十五匹と言っても、どいつもこいつも体長がアクセルの腰くらいまであった。普通の狼より遥かに大きかった。こんな狼に襲われたら、ピピのような子うさぎは丸飲みにされてしまうだろう。
もちろん、自分だって下手をすれば食われてしまうのだが……。
「たあぁっ!」
右から襲ってきた狼を斬りつけつつ、正面の狼を突き刺す。続けざま左の狼を蹴り上げ、突き刺さったままの狼を振り回して小太刀を抜き、斜めから襲ってきた狼の首をスパッと斬り落とした。
血の臭いが濃厚になり、獣臭い死骸が周囲に積み重なっていく。
それでも、狼の群れは引いてくれなかった。
「はっ……はっ……」
アクセルは肩で大きく息をした。
普通、仲間が数匹倒されたら諦めて逃げていくものなのだが。この狼たち、随分としぶとい。
というか、応援はまだか。体力はともかく、武器の方がそろそろ危ない。狼の血がべっとりついてしまって、小太刀の切れ味が悪くなってきた。
「ウオォォン!」
ボスと思しき狼が長く遠吠えした。森全体に響くような声だった。仲間を呼んでいるのかもしれない。
――これ以上集まってきたらマズいぞ……。
内心で冷や汗をかきながら、アクセルは両手の小太刀を振った。砂利の上に狼の血が飛び散った。
それを合図に、狼が足下を狙って突進してきた。鋭い牙を剥き出しにして、こちらの脚を噛み千切ろうとしている。
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