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第122話
左腕は泉に漬けつつ、ピピの側に寄って右手で頭を撫でてやる。
嬉しそうに身体を擦り付けてくるピピを見たら、つくづくホッとした。狼に喰われなくて本当によかった……。
「しかし、あんなところで大量の狼と遭遇するとはな……。街の隣にある森なのに、危険すぎないか?」
言外に、もう少し安全対策を検討すべきでは……と述べたら、兄が急に神妙な顔をした。
「それなんだけど、森にあのサイズの狼がいるのはやっぱり変なんだよね。本来ならもっと小型で、群れの規模も小さいはずなんだ」
「えっ? じゃあ何故……?」
「実はお前を捜し回ってる時に、狼の餌らしき細切れ肉があちらこちらにバラ撒かれてるのを見つけて」
「……え? それどういうことだ?」
「どうもこうも、あの狼は故意に呼び出されたものじゃないかってこと。前回の大イノシシと同じだよ」
「はあ? わざわざ狼を誘き出したのか? 誰が? 何のために?」
「んー……」
兄はじっと斜め方向に目線を動かした。どう説明しようか、考えているようだった。
「……あの三人を締め上げれば、口を割るかな」
「あの三人って……」
「ウルフ、ビラク、ロシェ。問題児として有名な三人組だよ。今はそうでもないけど、昔は結構なワルをやってたんだ」
「えっ? そうなのか……?」
ビラクとは面識がないが、ウルフは見回り当番の仲間だし、ロシェは森の中で遭遇した。どちらも曲者だなとは思ったが、仕事をサボったり、嘘をついたりする程度で、それほど大きな悪事を働くタイプには見えなかった。
それに、それほど面識のない自分にわざわざ嫌がらせをしてくる理由がわからない。
「まあ、とにかく」
背泳ぎのまま、兄がスィーッと寄ってきた。
「戦士だからといって、皆が皆いい人とは限らない。特にお前はお人好しだから、気をつけないとだめだよ。また悪いやつらに騙されたら大変だ」
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