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第123話

「う、うん……。でも、俺なんかを騙したところで何の得にもならないと思うけどな……」 「そんなことないよ。少なくとも私は悲しくなる。直接私に何かできない人たちは、お前に嫌がらせをすることで間接的に私を攻撃してるんだ」 「えっ!? 兄上に嫌がらせしたいやつなんているのか!?」 「まあ、いろんな人がいるからさ……」  そう言って、兄は一度ザブンと泉に沈み込んだ。二、三秒後にまた浮上してきて、背後にそっと回ってくる。 「……だから本当に気をつけて。少しでも怪しいと思ったら、それ以上深入りしないこと。わかった?」 「ああ、気をつけるよ」  首を捻って兄を見たら、兄の微笑みが目に入った。兄は後ろからこちらを抱き締めると、顔を近づけて軽くキスしてきた。  ――ああ、もう……。  愛されすぎて胸が苦しい。愛されれば愛されるほど、失う恐怖も増していく。その不安は兄も同じように感じているだろう。  だからこそ、二度と兄を心配させないよう強くならねばならない。 「兄上……」  回復した左手を兄の手に重ね、二人だけのぬくもりを味わっていると、 「えへへ、やっぱり二人は仲良しだねー」 「おわっ!」  岩のところからミューがひょっこり頭を出し、アクセルは慌てて兄から離れた。  ミューはほとんど気にせず、鎌に刺さった血まみれ狼を掲げてきた。 「怪我治ったなら、狼料理作ってくれるー? シチューもいいけど、サンドイッチにしても美味しいと思うんだ。どうアクセル?」 「あー……サンドイッチは肉質によるかな……」  狼肉は食べたことがないが、あまり硬かったり臭いがきつかったりすると、サンドイッチには向かないと思う。 「ところで、そこのうさぎさんは食べるの?」 「ぴ!?」  ピピはびっくりしたように耳を立てると、アクセルの腕を駆け上がって肩に登った。髪の毛に隠れながら、警戒心MAXでミューを見ている。

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