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第126話
「そんな大きくなるんじゃ、家では飼えないね」
「だよな……」
兄に言われ、小さく溜息をつく。
残念だが、お別れするしかなさそうだ。全長三メートルなどになったら自宅が壊れてしまう。餌だってどれだけあげればいいかわからない。やはりピピは、山や森で暮らしていくのが一番なのだ。
アクセルは指先でピピを撫でながら言った。
「ごめんな、ピピ。やっぱりきみを飼うことはできないみたいだ」
「……ぴ?」
「後で森に連れて行ってやるから、そこでお別れしような」
「ぴぃ……」
しょぼーんと耳を垂らし、悲しげな顔になるピピ。後ろ髪を引かれる思いだが、飼えないものは飼えないのだから仕方がない。
せめて森に行くまでは……と思い、アクセルは肩にピピを乗せて図書館を出た。
ところが、扉から出てすぐのところで問題の人物たちと鉢合わせしてしまった。
「……あ」
「げっ……!」
ウルフ、ビラク、ロシェ。特に直接面識のあるウルフとロシェは、アクセルと目が合った瞬間気まずそうにそっぽを向いた。
――この反応、やっぱり自覚はしてるんだな。
アクセルを罠に嵌めたことを。
ただ、こうしてバツの悪そうな顔をするだけマシかなと思った。本物の悪党なら何の罪悪感も覚えないから、態度もいつもと変わらないはず。そういう意味では、この三人はまだ話が通じると言える。
「おお、これはちょうどいいね」
兄が口元を緩ませて前に出た。その目が冷たく据わっていた。
「きみたちにちょっと聞きたいことがあるんだ。時間は取らせないから、いいよね?」
「き、聞きたいことって何だよ?」
「あれ、想像つかない? ある程度は自覚してると思ってたんだけど」
にこりと微笑みながら、刀の柄に手をかける。
刺さるような殺気を感じ、アクセルは兄の肩を掴んで止めた。
「待ってくれ、兄上。ここは俺が」
「? いいけど……?」
やんわりと兄を横に退け、三人の前に立つ。一体何をされるのかと、三人が身構えた。
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