130 / 2015

第130話

 ――不仲な兄弟か……。  想像できない。自分と兄はもちろんのこと、生前、周りにいた数々の兄弟も皆仲がよかった。少なくともアクセルにはそう見えた。  身内と不仲というのはどんな感じなんだろう。一緒にいるのに全く口を利かないとか? 会う度に喧嘩ばかりしているとか? 確かにそんな環境にいたら、仲良し兄弟を羨ましく思うのも仕方ない気がするが……。  狼の肉を煮込んでいる間も、アクセルの頭は兄弟仲のことで煮詰まっていた。 ***  狼料理をたらふく食べたミューは、満足して自宅に帰っていった。 「……ミューの味覚はちょっと変わってるかもね。私はやっぱりイノシシや鹿の方がいいや」  肉を叩いたり、下味をつけたり、香辛料を使ったり、できる限り手は施したつもりだ。……が、長時間煮込んでも独特の臭みと歯ごたえは消えず、兄は味見をしただけでギブアップしてしまった。  もちろん、その分の代わりとして鶏肉のステーキは作ったが。 「ところで兄上、今夜は……」  アクセルの自宅で夕食をとった後も、兄は帰る様子がなかった。だらだらとお茶を飲み、完全に居座ってしまっている。 「うん? 帰った方がいい?」 「そんなことはないが……」 「じゃ、今日はこっちに泊まるよ。昨日は私の家にお泊まりしたから順番だ」 「は、はあ……」  うちには客用の布団はないから、またベッドにくっついて眠ることになりそうだ。兄専用の布団でも買っておくべきだろうか……。 「アクセル」  しばらくボーッとしていたら、兄に手招きされた。隣に座り込んだ途端、じっと顔を覗き込まれる。 「どうしたの? なんだか元気ないね」 「あ、いや……今日はいろんなことがあったから……」 「疲れた?」 「……少しな」 「じゃあ、あまり触らない方がいい?」 「っ……!」  ススス……と太ももを撫でられて、思わずぞくりと背筋が痺れた。

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