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第131話

 アクセルは兄の手を握り、深呼吸して気持ちを落ち着かせた。そして言った。 「……兄上は、不仲な兄弟って見たことあるか?」 「不仲? それなりにはあるけど、どうして?」 「いや、その……俺、兄弟ってみんな仲がいいものだと思ってて……」 「んー……まあ、そこはいろいろあるんじゃない? 私たちみたいな仲良し兄弟もいれば、ミューやユーベルみたいなすごい兄弟もいたり」 「……すごい兄弟?」 「あ、お前は知らないんだっけ? ミューとユーベルは貴族出身なんだよ。特にユーベルは公爵の出だから、権力争いが激しかったみたいでね。結構殺伐とした環境で生きてきたらしいよ。兄弟・親戚間で殺し合うなんて当たり前だったんだって」 「…………」 「でも私たちには関係ないよね。他の兄弟が不仲でも、私たちはずっと相思相愛だもん」 「そう、なんだが……」  自分は自分、他人は他人。それはわかっている。  だけど、世の中に不仲な兄弟が存在していることも今日わかった。 「血の絆」などというものはアクセルが考えているよりずっと不確かなもので、些細なきっかけで逆向きのベクトルに弾かれてしまうとも限らない。  それを思うと、どうしても不安が拭えなかった。自分は永遠に兄のことを好きでいる自信があるけれど、兄は果たしてどうなのだろう……。 「……兄上と不仲になったら、嫌だな」  正直な気持ちをポツリと呟いたら、不意に兄の表情が硬くなった。 「……何それ? 私のこと信じていないの?」 「えっ……?」 「私はこんなにお前のこと愛してるのに、お前はそれを信じていないわけ? だから不安になってるってこと? そうなんだね?」 「……!?」  頭から血がさあっと引いていく。だが、今の呟きが失言だったと気付いた時にはもう遅かった。  握っていた手をぐっ……と引っ張られ、襟首を掴まれて床に押さえ込まれる。

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