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第144話

 上位ランカー――特に七位以内に入っている戦士の死合いは大人気で、スタンド席であっても満席になることがほとんどだった。上位ランカー同士の死合いともなればなおさらである。それだけに座席争奪戦も激しかった。  他の死合いはともかく、この死合いだけはどうしても見たい。そう思ったアクセルは、すぐさま兄を捕まえてこうおねだりした。 「兄上、お願いがあるんだ」 「なに?」 「今日の死合い、どこか席を用意できないだろうか? わがままを言っているのは承知しているが、今日だけは絶対に……」 「うん、いいよ。じゃあボックス席用意しといてあげる」 「……え? ボックス席? いや、そんないいところじゃなくても……」 「どうせ観戦するならよく見える席の方がいいでしょ。席を確保する手間は同じだし、私もお前が近くで見てくれた方がやる気になる」 「そうだろうか」 「そうだよ。というかお前、どうせおねだりするなら『ボックス席よこせ』くらい言いなさい。弟が変なところで遠慮するものじゃないよ。十一歳も年下なのに」 「いや……でも今は兄上と同い年だし」 「同い年になろうが年上になろうが、お前は私の弟だよ。例えお前がおじいちゃんになってからヴァルハラに来たとしても、可愛く思う自信がある」 「そ、そうか……」  ありがたいことはありがたいが、そこまで外見年齢が逆転していると違和感しかない。 「じゃ、私の名前で席とっとくから。会場の受付当番にそう言ってね」  兄は片マントを翻してこちらに背を向けた。 「兄上」  ひとつ言い忘れていたことを思い出し、アクセルはその背に言葉を投げた。 「御武運を」  すると兄は、少し首を捻ってひらひらと手を振り返してくれた……。 「フレイン様とランゴバルト様、どっちが勝つかなー?」  と、チェイニーが言うので、アクセルは真面目に考え込んでしまった。 「どうだろう……。どちらが勝ってもおかしくないが、武器や装備的な相性ではランゴバルト様の方が有利に思える」 「あれ、意外。アクセルはフレイン様を応援してるんじゃないの?」

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