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第147話※
兄は左肩に銀色の肩当てをつけており、その下でおしゃれな片マントがひらめいている。白をベースにしたジャケットは如何にも王子様然としていて、これから激しい戦いをする人とは思えなかった。柔らかな金髪がふわりと揺れ、口元にはいつもと変わらない微笑みが浮かんでいる。
一方のランゴバルトは、以前狩りで見かけたのと同じ黒塗りの鎧に長戟を担いでいた。
「ふん、今日の死合いは楽しめそうだな」
ランゴバルトが長戟の柄で地面を叩き、ニヤリと笑った。不敵な笑みだったが、強者と戦える喜びを噛みしめているようだった。
兄もにこりと笑い、太刀の鞘に手をかける。
「たまには本気を出さないと腕が鈍ってしまうからね。お互い遠慮なしでいこう」
「ふん、当然だ」
場内が静まり返った。静寂を割るように、上からヴァルキリーの声が降ってきた。
「それでは、十秒後に死合い開始となります。十……九……」
八、七と会場全体でカウントダウンが始まる。アクセルも呟くように死合い開始を待った。六……五……。
「……!」
ほんの一瞬、兄がこちらを見たような気がした。気のせいかもしれないが、アクセルにはそう見えた。二……一……。
「始め!」
兄とランゴバルトがその場から消えた。
次の瞬間、会場の中心で武器をぶつけ合っている二人が目に入った。ガキン、という金属音が聞こえ、ぶつかり合った衝撃が波となって空気を振動させる。
ランゴバルトが力任せに長戟の柄を回転させた。兄は長戟の刃をかいくぐり、肩関節を狙って切っ先を突き出した。
甲冑で覆われた相手と戦う時は、関節を狙うのが常套手段である。どんなに頑丈な甲冑でも、関節部分には隙間があるからだ。そうやって少しずつ四肢を削ぎ落としていくのが基本的な戦い方だった。
ランゴバルトの左肩に太刀の穂先がめり込んだ。甲冑の隙間から鮮血が噴き出したのが見えた。
「ふん!」
だがランゴバルトはその程度の傷などものともせず、柄から片手を離し、兄に向かって拳を奮った。
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