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第148話※
兄は首を捻りつつ、ランゴバルトの鎧を蹴って太刀を引き抜いた。そして長戟の間合いを計りつつ、殴られた頬を拭った。
「……さすがに手強いね」
「ふん、お前もなかなかやるな。首を捻って直撃を避けるとは」
「まあ……今のパンチをまともに喰らってたら、首折れてただろうから」
それで終わりだなんてつまらない……と兄が微笑む。
――ああ……。
ぞくりと背筋が疼いた。普通なら「兄の美顔を殴るなど言語道断」と言いたいところだが、観戦中はその考えすらも霧散してしまう。もっと戦って欲しい、もっと激しいものを見せて欲しい。まだまだ死合いは始まったばかりなのだ。お楽しみはここからである。
そうだよな、兄上……?
「ふん……痛みに邪魔されるのもつまらん。そろそろ本気で死合うとするか」
ランゴバルトが柄で地面をカーン、と叩いた。それを合図に、彼が地響きのような雄叫びを上げた。
「グオオォォォッ!」
ランゴバルトの殺気が一気に膨れ上がった。周りの空気がズン、と重くなり、刺すような痺れが観客席にまで伝わってくる。細かい砂や石がバチバチ飛び散り、前列の透明なプレートに当たっているのが見えた。
「おっ、ランゴバルトが狂戦士 になったな」
「洗練さはゼロですが、さすがに迫力は桁違いですね」
ジークとユーベルが感嘆の溜息をつく。ミューだけは顔色を変えずに飴玉をしゃぶり続けていたが、アクセルは溜息では収まらない興奮を覚えつつあった。
――これがランキング二位の狂戦士 モード……!
ユーベルの言う通り、その覇気は並みの者とは比べ物にならない。雰囲気だけで人を殺せるくらいの迫力があった。さすがに、下位ランカーを雑魚呼ばわりするだけのことはある。
ならば、彼と対峙している兄も……。
「なるほど、じゃあ私も遠慮なく」
兄が太刀を構え直した。次の瞬間、兄の金髪がぶわっと一気に逆立った。
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