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第150話※
「……ふむ。ではこうしようか、なっ!」
兄がランゴバルトの間合いに踏み込んだ。待ってましたとばかりに、ランゴバルトが長戟を振り抜いた。兄は長戟の柄を踏み台にしてジャンプすると、太刀の鞘を抜き放ち、最も丈夫な尻尾の部分で兜 を思いっきり殴りつけた。
硬い物同士がぶつかり合い、兜がゴォォンと大きく反響する。
「ぐっ……!」
ランゴバルトが拳を突き出し、兄を殴りつける。吹き飛ばされた兄は空中で体制を立て直し、ズザザ……と地面に着地した。
ややよろけながら、ランゴバルトが兜を脱ぎ捨て、それを兄に投擲してくる。兄は投げつけられた鉄の塊を太刀で弾き、突っ込んできたランゴバルトとつばぜり合いを始めた。
それを見ながらも、アクセルは少し首をひねった。
「ランゴバルト様、何故兜を脱いだんだ……?」
破壊されたわけでもないのに、わざわざ兜を脱ぐ意味がわからない。被ったままでいれば頭部への斬撃も防げるのに。
すると、ミューが当たり前のように言った。
「被っていられなくなったんだよ。狂戦士モードだと余計にね」
「……? どういうことだ?」
よくわからなくて聞き返したら、今度はジークがしたり顔で述べた。
「お前さん、ヘルメット型の兜って被ったことないか? 首まですっぽり覆われてるやつ」
「生前に一度だけ。俺には合わないなと思ってやめちゃいましたが」
「ならわかるだろ? あの手の兜を被ってる時、外から硬い物で思いっきり殴られたらどうなるか。内部ではとんでもない音が響いてたはずだぜ?」
「あ……」
言われて納得した。
ランゴバルトが殴られた時、外からでもゴォォンというかなり大きな音が響いていた。ならば兜の内側では、頭が割れるほどの音が響いていたに違いない。狂戦士モードの時は聴覚も鋭く研ぎ澄まされているため、いつもより余計に大きく聞こえたはずだ。それこそ鼓膜が破れるくらいの爆音だっただろう。
聴覚をやられると、人はバランス感覚が鈍くなる。だからランゴバルトは一刻も早く兜を脱ぎ、聴覚へのダメージを最小限に抑えようとしたのだろう。それでもしばらくは足下のふらつきに苛まれるに違いない。
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