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第156話

 ――でもこの分じゃ、何を言っても諦めそうにないしな……。  仕方なくアクセルは、溜息をつきながらこう言った。 「子分は困るが、友達なら……」 「友達!? ランキング三十五位の強者と友達ですか!?」 「友達にランクは関係ないだろ。俺の同期に中間ランクの戦士いるけど、未だにいい友人でいてくれるぞ?」 「そうですかー。アクセルさんは心が広いんですね」  ……心が広いとかではなく、当たり前のことだと思うのだが。ランキングに左右される友情なんて、最初から友情ではない。 「じゃ、今日から僕はアクセルさんの子分兼友人ですね! よろしくお願いします!」 「ああ、うん……」 「では、今日のところはこれで失礼します! また明日窺いますので!」  ロシェはビシッと敬礼をした後、ダッシュでその場を去っていった。  ――なんだったんだ、あれは……。  意味がわからない。ロシェの行動が謎すぎる。明日も窺うとか本気なんだろうか。なんだかおかしな人に好かれてしまったようだ……。 「やれやれ……」  まあいい。とにかく帰ろう。これ以上変な人に絡まれても困るし。  アクセルはさっさと自宅へ戻った。差し入れのタオルと水はテーブルの隅に置き、ひとまず浴室で汗を流すことにした。  温かい湯を頭から浴びて全身を洗っている最中、自分の中心がやや反応していることに気付いた。  ――げ……。  鍛錬して発散したつもりだったのに、死合いの興奮を未だに引きずっているようだった。我ながら浅ましくて嫌になる。  とはいえ、慰めたら余計に引っ込みがつかなくなりそうだ。アクセルはあえて無視を決め込むことにした。違うことを考えていればしのげるだろう……多分。  夕食何にしよう……と無理矢理思考を反らしつつ、浴室を出た。憂さ晴らしがてら野菜や肉をザクザク切り刻み、塩こしょうで適当に炒めておかずを作った。それを黙々と平らげ、食器を片づけて、寝る準備をしてさっさとベッドに入った。  明日は五時くらいに起きて、朝食の下準備をしてから兄を迎えに行って、一緒に朝食をとりながら一日の予定を立てて……云々。  あれこれ考えていたらいつの間にか眠っていた。途中で兄に組み敷かれる夢を見たが、夢なのでさほど恥ずかしいとは思わなかった。

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