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第157話

 そして翌朝。浅い眠りの中にいたアクセルは、頬に何かが触れた気配がしてぼんやりと目を開けた。 「おはよう、アクセル」 「…………」  おや、兄の姿が見える。まだ夢を見ているのだろうか。というか、今何時だろう……。 「お前の寝顔は見慣れてるけど、何度見ても天使みたいに可愛いね。無防備すぎて、ちょっとムラムラしちゃう」  人差し指で頬をつつかれて、ようやく意識が覚醒した。 「……ふァッ!?」  驚きのあまり、ベッドから転げ落ちそうになる。 「あ、兄上!? 何故ここに!?」 「何故って……予定より早く蘇生できたから、お前と遊ぼうかなと思って」 「は? え……」 「なんか棺当番が、普通より大きめの棺に入れてくれたみたいでね。目覚めたら夜だったよ」 「夜!? そんなに早かったのか?」 「うん。でもまだ深夜じゃなかったのに、お前ときたらさっさと寝てるんだもの。しょうがないから寝顔を見るだけにしといたよ。寝込みを襲わなかったお兄ちゃん、偉いと思わない?」  ……それは威張るところではないと思うのだが。 「というか、何故入って来られたんだ? 俺、ちゃんと戸締まりしてあったよな?」 「ああ、私だいたいの鍵は開けられるから。チェーンかかってても強行突破しちゃうし」 「ええー……?」 「それよりアクセル、お兄ちゃんお腹空いちゃった。朝ご飯にしない?」 「あ……ああ、それじゃあ……」  ベッドを下りて朝食の準備をしようと思ったのに、兄に上からのしかかられ、おまけに煽るようなキスをされて、アクセルはぴくりと肩を震わせた。  やんわりと兄を引き剥がし、下から抗議する。 「すまないがどいてくれないか? 朝ご飯にするんだろ?」 「うん、朝ご飯にするよ。リアルな朝ご飯はこれが終わってからね」 「……えっ? ちょっと兄上……んっ」  再び唇を塞がれ、濃厚な口付けを見舞われる。やや薄めの唇を啄まれ、舌を引きずり出されて、たっぷりと唾液を注ぎ込まれる。

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