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第170話

「ああ……最高」  ごろりと兄が隣に寝転んできて、指先で髪を弄ってくる。 「普段真面目なお前がこんなに色っぽく乱れるなんて、きっと誰も知らないだろうな」 「そ、それは……」 「いいんだよ、そこもお前の魅力だからね。いつも可愛い顔を見せてくれて、私はとっても嬉しい」 「兄上……」  長い腕で抱き締められ、ついドキドキしてしまう。アクセルはしどけない姿のまま、兄の胸元に頬を擦り寄せた。そして自分も腕を伸ばし、兄に抱擁を返した。 「あ、なんか今思いついたんだけど」  すると、急に兄がこんなことを言い出した。 「こうやって抱き合えば二人で棺入れるんじゃない?」 「……本当に急な思いつきだな」 「でもほら……お前、傷が気になるって言うから。こうして一緒に入れば、早く出ることもないかなと思って」 「まあ、XLサイズならいけるかもしれないが……それ以前に、二人同時に入る機会なんてないと思うぞ?」  昨日の死合いのように、両者戦闘不能で終わることもある。だが兄もランゴバルトもそれぞれ違う棺に入れられていた。仮に抱き合って死んだとしても、強制的に引き剥がされるのではなかろうか。 「うーん、無理かなぁ……。お前とだったら、一緒の棺に入ってみたかったのに」 「まあ、俺も入れるものなら入りたいが……。身体が蘇生する時に変な仕上がりになりそうじゃないか?」 「変な仕上がりって?」 「例えば、その……腕だけ兄上の腕になっちゃった、とか……」 「ああ、なるほどね。それは面白い発想だなぁ」  くすくす笑い、手を取ってくる兄。自分の腕と見比べるようにアクセルの腕を見て、更にニコッと笑った。 「お前の腕、綺麗に筋肉ついてていいな。今度交換しない?」 「何を言ってるんだか……。俺の腕になったら兄上の太刀が使えなくなるぞ」 「たまには違う武器を使うのもいい経験になるよ、きっと。……あ、それだったらミューの腕も気になるかも。あの身体でどうやってあの大鎌を振るってるんだろうね?」 「……ミューはちょっと、いろんな意味で別格だと思うが」  というか、ミューの腕が兄の肩から生えていたら違和感があってしょうがない。

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