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第174話

 ようやく排泄が止まったところで、兄が少し気まずそうにこちらを覗き込んできた。 「えっと……ごめんね。大丈夫?」 「っ……!」  排泄を見られた羞恥と白々しい謝罪に、猛烈に腹が立ってきた。アクセルは力の入らない腕で兄を思いっきり殴りつけた。もっとも、力が入っていなかったのでたいした殴打にはならなかったが。 「兄上の馬鹿っ! だから嫌だって言ったのに! なんでこんなことまでするんだ!」 「あああ、ごめんごめん。最後のこれは完全に余計だったね、ごめんね」 「ごめんじゃないっ! 絶対最後わざと押しただろ! どうなるかわかってたくせに! ホント信じられない!」 「あ、うん……半分わざとだったけど、ここまで勢いよく出ちゃうとは思わなくて……。ごめんね、ちょっとやりすぎた」 「とか言って、どうせまた同じことするんだろ! もう兄上とはしばらくやらないからなっ!」 「えええ? それはちょっと嫌だな……」 「兄上が悪いんだろ! もう知らない! 俺は風呂入ってくる!」  ベッドを下り、足音も荒く浴室に直行する。そしてまだ温まりきっていない水を頭から豪快に被った。結構冷たかったが、熱くなった身体にはちょうどよかった。  ――まったくもう、兄上は……!  あそこまでやるなんて聞いてない。今までそれなりに辱められてきたが、こんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてだ。やめてくれって言ったのに。いくらなんでも酷すぎる。  もう一度水を被って物理的に頭を冷やし、身体を洗おうとした時、風呂場のドアががちゃっと開いた。 「ねえアクセル」 「んなっ! 兄上……!」  アクセルの家の風呂には鍵がついていない。普段はほとんど気にしていないのだが、今この瞬間だけは「鍵をつけておけばよかった」と激しく後悔した。

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