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第175話

 全裸の兄が堂々と入ってきたので、アクセルはその肩を掴んで押し戻した。 「入ってこなくていいっ! どうせここでもやるつもりなんだろ! その手には乗らないぞ!」 「違う違う、そうじゃないんだ。ちゃんと責任とらせて欲しいんだよ」 「そんなこと言ってまた俺をぐちゃぐちゃにするんだろ!」 「だから違うって! 今度はお前が私をぐちゃぐちゃにして欲しいんだ」 「…………は?」  思いがけない言葉に一瞬フリーズする。  ぐちゃぐちゃにして欲しい? どういうことだ? 兄上は一体何を言っているんだ……? 「いつもお前ばかり辱められるのは不公平だもんね」  と、後ろ手に風呂場のドアを閉める兄。 「だから今度は私が下になろうかなって。遠慮しないで思いっきりやっちゃっていいよ」 「え、いや……兄上、それは……」  首筋に腕を回し、兄が挑発的に迫ってくる。もとより狭い浴室に逃げ場などなく、アクセルはあっという間に壁際に追い込まれてしまった。  ――というか、なんだこのシチュエーション……。  これ、普通は逆なんじゃないのか? 攻める側が壁ドンみたいなことをするんじゃないのか? こういうこともあるのか?  いや、そもそも自分が兄を攻めるなんて考えたこともないのだが。自分が下でいることがあまりに当たり前すぎて、初めての時だって自然と兄に身体を預けていた。兄が相手の時は組み敷かれるのが当然だと思い込んでいた。  でもそうか。どちらも男同士だから、やろうと思えば逆の立場にもなれるのか……。  ――いや、だからって俺が兄上を抱くのは……。  そんなことできるのか? ロクに女性に触れたこともない自分が?  兄は「思いっきりやっちゃっていい」などと言っているが、正直テクニックには全く自信がない。上手くできなくて兄を苦しめてしまったらどうしよう。痛い思いをさせてしまったらどうしよう……。  さんざん迷った挙句、アクセルは呟くように言った。

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