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第176話(リバ注意)

「兄上……やっぱり俺には、兄上を抱くのは無理だと思う……」 「どうして?」 「俺なんかが触れたら、きっと兄上を傷つけてしまう……。俺、そんなことはしたくない」 「でもお前、経験ないんじゃないの?」 「経験ないから、余計に触れられないんだ……」  そう言ったら、兄が軽く微笑んできた。 「馬鹿だね、お前は。経験ゼロの人が超絶テクニックを持ってるはずないだろう? そんなの最初からわかってるよ。気にしなくて大丈夫」 「でも……」 「もっとシンプルに考えてごらん? 初めて抱くなら相手は誰がいい? ヴァルハラには女性はいないから男性限定だ。ヴァルハラにいる男性で、選ぶなら誰?」 「……!」  ハッと小さく息を呑む。  アクセルが心から尊敬し、愛しているのは兄だけだ。兄以外の人物が自分の隣に寝ているなんて考えられないし、考えたくもない。選ぶまでもなく、選択肢は最初からひとつしかないのだ。 「兄上がいい……」 「だろう? だったらいいじゃない。お前の初めて、私にちょうだい?」 「でも……あの、本当にいいのか……?」 「いいんだよ。私がそうして欲しいって頼んでるんだから。お前の好きなようにして」 「……さっきのお詫びだったら、こんな形じゃなくてもいいんだぞ?」 「お詫びもあるけど、それよりは私がお前を受け入れたいって方が大きいかな。お前がしてくれるなら、テクニック関係なくとても気持ちいいだろうね」 「そんな……」 「さ、どうぞ。どこからでも触っていいよ」 「っ……」  そこまで言われては引き下がれない。アクセルだってこれでも男だ。技術はないけれど、気持ちなら絶対に負けない。  せめて兄が辛くならないように、優しく丁寧にしてあげなくては……。 「兄上……」  恐る恐る兄の背に手を回し、なめらかな背中を撫でる。肩甲骨を辿り、背筋をなぞり、そっと臀部に掌を移動させた。

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