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第193話

「やっぱり今回は辞めておいた方がいいんじゃないか? 普通の狩りとはわけが違うんだぞ?」 「いやいや、大丈夫だよ。ユーベルが採りに行けるんだから、私たちに採れないはずがない」 「そうは言っても、俺たちは初心者だし……」 「最初は誰でも初心者だよ。大丈夫、いざとなったら私が守ってあげる」 「兄上ぇぇ……」  やはり兄はハチミツを採りに行く気満々のようだ。こうなってしまうと止めるのは難しい。不安だらけだが、付き合うしかないのか……。  ――本当にもう……『気を付けろ』とか言ったのはどこのどいつだよ。  片っ端から「危ないよ」と言われて留守番させられるよりマシだけど、そんな危険なミツ採集なら必須でない限りやらないのが賢明だと思う。  それとも、自分が側にいる時は多少危険なことがあっても平気だと思っているのだろうか。確かに心細さは半減するが、だからと言って危険がなくなるわけではないのだが。 「ならユーベル様、ハチミツ採集にふさわしい装備を教えてください。家に戻って準備してきますので」  諦め半分でそう聞いたら、ユーベルは片眉を上げてこう答えた。 「装備なんてハチの巣を切り取る武器があれば十分ですよ。むしろ鎧は着て来ないでください。邪魔にしかなりませんので」 「……え? でもハチの針に刺されたら終わりなんじゃ……」 「ですから、鎧が役に立たないんですよ。ヤツら、鎧の隙間からガンガン刺して来ますからね」  言われて、「なるほど」と納得してしまった。  ユーベルは更に続けた。 「そしてこれは心掛けていただきたいんですけども、便宜上ハチミツ採集と言っていますが、実際はハチにお願いして『ハチミツを分けていただく』と言うのが正しいです。くれぐれもハチを倒してハチミツをゲットするなどと考えないように」 「……え? ハチにお願いって……ヴァルハラのハチは言葉が通じるんですか?」 「いえいえ、通じるわけではありませんが。ですが、彼らの方で何かを感じ取るんでしょうね。殺気を持った人間にはすぐに針を向けてきます。パニックを起こして刀を振り回したりしないでくださいね」 「は、はあ……」

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