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第201話(フレイン視点)
――そんなに私のこと、憎んでたのかい? アクセル……。
ここまで来ると、純粋に「毒だけのせい」とも言えなくなってくる。火のないところに煙が立たないように、一ミリでも「目障りだ」とか「殺したい」とか思っていなければ、ここまで殺気が増幅されることはないからだ。
アクセルが――例え無意識にでも――兄のことを「憎い」と思っていたからこそ、毒によって感情が暴走したのではないか。少なくともフレインはそう考える。
だとしたら、アクセルが元に戻った時、自分は一体どんな顔をして弟に向き合えばいいのだろう。
気持ちを切り替えるのは得意だけど、今回ばかりは「なかったこと」にできる自信がない。それに、弟が少なからず兄のことを「憎い」と思っているのなら、このまま関係を続けていたらまた同じことの繰り返しになってしまう。
少し距離を置いた方がいいのではないか。お互い冷静になるまで、気持ちの整理がつくまで、しばらく会わない方がいいのではないか。フレインは弟のこと純粋に大好きだけど、そんな風に思われているなら、これ以上嫌われたくないし……。
「たあぁぁッ!」
アクセルが躊躇なく小太刀を振り下ろしてくる。自分が何をしているのか、まるでわかっていなさそうだった。現に瞳は焦点を失い、何かに憑りつかれたような目をしている。
次に目覚めた時、何故自分が棺に入っているか全然わからないんだろうな……と、フレインは思った。
知らない方が幸せだが、兄が突然「お前とはもう会わない」と言い出したら彼は狂ったようにその理由を探ろうとするだろう。そしていつか自分のやったことに気付いた時、弟は自己嫌悪にまみれ、泣きながらこちらに釈明してくるだろう。あれは全部毒のせいだ、「殺したい」なんて絶対に思ってない、俺はいつでも兄上のこと愛してる……と。
それが容易に想像できるから、余計に顔を合わせたくなかった。
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