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第203話(フレイン視点)
「お前さん、酔ってるのか? 珍しいな、酒には強いのに」
「酔ってないよ……」
「……どっちでもいいけどよ。とにかく、もう帰った方がいいぞ。また昔みたいに犯されちまうかもしれないし」
「別にいいよ……今はそういう気分だもの」
「おいおい……」
今度こそジークは完全に呆れてしまったようだ。
ボーッとしているところで右腕を引っ張られ、力ずくで立ち上がらされて、肩を貸される。
「家まで送ってってやる。帰るぞ」
「自分の家に帰る気分じゃないんだ。きみの家に泊めてよ」
「はぁ? 何でだよ」
「いいじゃない、たまには。人を泊められないほど狭い家に住んでるわけじゃないでしょ」
「……ったく、しょうがないな」
ジークに連れられ、フレインは彼の家に乗り込んだ。
以前は割と気軽に押し掛けていたものだが、アクセルがヴァルハラに来てからは一度も訪問していない。弟は真面目で純粋だから、他の男の家に行ったらヤキモチ焼いちゃうかなと思って、しばらく遠慮していたのだ。
でも、今はそんなことどうでもいい。
「ほら、これ飲んでさっさと寝ちまいな」
「だから酔ってないってばー……」
コップの水を受け取り、ぐいっと一気に飲み干す。
酒が入っているせいか身体は熱いけど、頭はハッキリしているという妙な気分だ。
ジークは「寝てしまえ」と言うが、眠気も全く襲ってこない。記憶が吹っ飛ぶくらい泥酔できたら楽なのに、思うようにいかなくてそれが逆に苦しい。
「本当に、思い通りにならないなぁ……」
「……何言ってるんだか知らんけどよ」
ジークが空になったコップを取り上げる。
「俺、明日は朝から狩りの当番入ってるからな。寝坊したら閉め出すから、そのつもりでよろしく」
「うん……それはいいんだけどさ」
フレインは立ち去ろうとしたジークの腕を掴んで、くるりと振り向かせた。そして正面から抱きつくと、耳元で挑発的に囁いた。
「ねえ、慰めてくれない?」
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