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第214話
「それは……それは、いくらなんでもあり得ないんじゃ……」
さすがに信じられなくてそう呟いたら、兄がじろりとこちらを睨んできた。
「だったら、私が嘘をついてるって言うの?」
「い、いや……そういうわけでは……」
「どんなに信じられなくても全て事実だよ。昨日お前は殺気を剥き出しにして私に斬りかかってきた。最初は首まで絞めてきたしねぇ……」
「え……? え……?」
首を絞めた? 殺気を剥き出しにして? 本当に俺がそんなことを……?
――嘘だろ……?
兄が嘘をついているとは思わない。でも自分が兄を殺そうとしたなんてさすがに信じられない。それはアクセルにとって一番あり得ないことだからだ。
でも……でも……本当に昨日そんなことをしたのなら、俺は……。
ぞっと顔を青くしていると、兄は投げやりな口調で言った。
「……でも、いいんだ。あれがお前の本心だってわかったし」
「えっ……!?」
「ずっと目障りだと思ってたんでしょ? 私のこと」
「違う! それは絶対にない! 俺は兄上のことずっと好きだったし」
「でもお前、はっきり『殺してやる』って言ってたよ。『あんたさえいなければ』って」
「それはハチの毒に冒されてたからだろう? 俺はそんなこと思ってない」
「嘘だね。いくらハチの毒だとしても、一ミリも思ってないことを実行することはできない。心のどこかでそう思ってたから、私を殺そうとしたんだ」
「そんな……そんなこと俺は……」
「さすがにショックだったよ……。私はお前のこと可愛がってきたけど、お前はそうじゃなかったんだなって……。私が想っているようには、お前は私のこと想ってないんだね」
「兄上……」
弁明も許されず一方的に言われて、さすがに泣きたくなってきた。
自分が悪いのはわかっている。兄を殺そうとして、それで兄を傷つけてしまったのもわかる。全く覚えがないけれど、敬愛する兄を傷つけてしまったのなら、それは全力で謝るべきだ。
反論するつもりはないし、言い訳するつもりもないけれど……せめてこれだけは言わせて欲しい。
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