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第215話

 アクセルは拳を握り締めながら、途切れ途切れに言った。 「そんな風に……目障りだなんて、思ってたら……わざわざヴァルハラに来たりしない……。兄上のことが好きだから……また兄上に会いたかったから……あなたがいなくなってからも、ずっと一人で、努力してきたのに……」 「…………」 「本当にすまない……俺が全部悪かった……。でも俺は……兄上のこと、昔からずっと大好きだ……それだけは、神に誓って本当だ……」  言っているうちに、どんどん胸が苦しくなってきた。こらえきれず、ぽろりと涙がこぼれた。  ――こんなことになるなら、ハチミツなんて採りに行かなければよかった……。  意地を張らないで素直に留守番しておけばよかった。普通の狩りにしておけばよかった。狩りじゃなくて、買い物や鍛錬にしておけばよかった。そうすれば、いつも通り仲良く二人で過ごせていたのに……。  様々な後悔の念に苛まれていると、兄が苛立たしげに前髪を掻き上げた。 「……うんざりなんだよね、そういうの」 「えっ……?」 「十一歳も年下の弟に泣いて謝られたら、私は許すしかないじゃない。例え内心では許したくなくても、お兄ちゃんだったら『いいよ』って言うしかないじゃない。そういうの、卑怯だと思わない?」 「そっ……」 「残念だけど、今の私はとっても傷ついている。とてもじゃないけど、泣き落としで許してあげられるような気分じゃないんだ。……だから、しばらく距離をとろう」 「……えっ? それはどういう……?」 「しばらくお前とは会わない。会話もしない。お互い冷静になって、それでも以前みたいに仲良くしたいと思ったら、その時に仲直りしよう」 「は……?」 「じゃあね、アクセル」  それだけ言って、あっさりと背を向ける兄。小さなマントをなびかせながら、どんどん遠くへ行ってしまう。 「ちょっ……ちょっと待ってくれ! いくらなんでもそれはあんまりだ!」  アクセルは反射的に駆け出し、背中から兄に抱き付いた。細かい理屈や事情を考えている場合ではなかった。このまま別れたら二度と仲直りできないような、そんな暗い予感が身体を貫いたのだ。

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