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第216話

「何でそこまでしなきゃならないんだよ! 俺は兄上のこと好きなのに! そりゃあ、たまには『ちょっとウザいな』と思うこともあるけど……そんなの、誰にだってあることだろ!? 兄上だってそうじゃないか! こうやって泣いて縋ってくる弟のこと、『鬱陶しい』と思う事あるだろ!?」 「そんな開き直られても……。とにかく離してよ。今はお前のわがままを聞いてやる余裕はないんだ」 「嫌だ! 仲直りするなら今ここでする! 距離なんかとりたくない!」 「あのねぇ……」 「兄上は俺が殺意を向けてきたって言ったけど、本当に俺は身に覚えがないんだよ。今でも半分嘘なんじゃないかと思ってる。なんでそんなことしたのか全然わからない。だから、一方的に『傷ついたから距離をとろう』なんて言われても困るんだ」  一生懸命訴えたのだが、兄の返事は相変わらず冷たかった。 「だから何? 身に覚えがないからってお前がしたことをなかったことにはできないよ。それに『今は無理』って言ってるだけで、今後一切関わらないとは言ってないだろう? お前、最近鍛錬サボり気味だし、しばらくお互いの仕事に没頭した方がいいよ。そうしたら自然と気持ちも落ち着いてくるはずだ」 「でも兄上……」 「とにかく今はだめ。離しなさい」  突き放すように言われて、アクセルの心はかえって冷めた。更に言い募ることもできたが、なんだか気持ちが萎れてしまった。  腕の力を緩めながら、擦れた声で聞く。 「どうしてもだめなのか……? どうしても離れないといけないのか……?」 「うん、どうしても。これ以上お前といたら、また私はお前を斬ってしまいそうだから」 「……そんなに、俺が憎いのか……」 「そうだね。でもそれ以上に愛してる」 「えっ……?」 「だからもう傷つけたくない。怒りに任せてお前を斬りたくない。……わかって」 「…………」  アクセルは無言で兄から離れた。  そこまで言われてしまったら、これ以上駄々をこねることはできない。胸が潰れそうなほど心苦しいが、今は身を引くしかない……。

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