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第219話
どのくらい泣いていただろうか。
ようやく涙が途切れ、気付いた時には昼頃になっていた。人通りも多くなり、皆怪訝な顔でこちらを見ている。
急にバツが悪くなり、アクセルは急いでピピを連れてその場を離れた。いい大人なのに、往来で泣きじゃくるとか随分恥ずかしい真似をしてしまった。いや、自業自得なのはわかっているのだが……。
何をする気にもならず、そのまま自分の家に戻る。棺を出てから何も食べていないことを思い出し、残っていた食材を機械的に調理し、黙々と食事した。ピピにも野菜の切れ端やミルクをあげた。
――本当なら、今頃兄上とハチミツを食べていたんだよな……。
コムハニーとかいう栄養たっぷりのハチミツを、焼きたてのパンにつけて兄と一緒に味わう。きっと美味しかっただろうな、と思った。どんなメニューであれ、好きな人ととる食事が一番美味しいのだ。
それがしばらく味わえないと考えただけで、また涙が出そうになった。
「……ピピ、兄上はいつ俺のこと許してくれるかな」
「ぴ?」
「不安なんだ。もしかしたら兄上は、金輪際俺とは会ってくれないんじゃないかって……。手のかかる弟に、いよいよ愛想尽かしちゃったのかもしれないって……」
「ぴー……」
「……俺、どうして兄上に愛されていたんだろう」
何度か「自信を持ちなさい」と言われたことはある。お前は今のままで十分魅力的だし、私にない部分をたくさん持っている。そんなお前だから、誰よりも愛しいと思うんだよ……と。
そういうものかな……と空虚な心で思う。「信じられない」とまでは言わないが、まるで実感がない。
こんな自分のどこが魅力的なのか。兄に突き放されて外でメソメソ泣いてしまうし、精神的にも強いとは言い難い。いつも兄に甘えてばかりで、幾度となく助けてもらったり慰めてもらったりしているくせに、お返しできるものはほとんどない。それどころか、無意識に傷つけて怒らせてしまう始末だ。
――本当にもう、しばらく会わない方がいいのかもしれない……。
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