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第220話
そう考えていたら、ピピがタタタ……とこちらに走り寄ってきて、テーブルを駆け上がり、手をガリガリ齧ってきた。
「ぴーぴー!」
「いてて……! ちょっ、ピピ、そんなに齧ったら痛いって」
「ぴー!」
「わかった! わかったから離してくれ。な?」
首根っこを掴んで、やんわりと引き剥がす。血は出なかったものの、手に思いっきり歯形がついてしまった。
「もう……どうしたんだ? ご飯が足りないのか?」
「ぴー」
「違う? じゃあ何だよ? 何か気に入らないことでもあった?」
「…………」
ピピがじっとこちらを見つめてくる。今度は何をするのかと思ったら、ピピは唐突にこんなことを言い出した。
「アクセル、すき」
「えっ……?」
「アクセル、すき」
「ピピ……」
本当に唐突な言葉だ。たった二文字のシンプルな言葉だが、ピピはピピなりにアクセルを慰めようとしているらしい。ぼくはアクセルのこと好きだよ、他の人が何と思おうとぼくはアクセルの味方だよ、だからそんなに落ち込まないで。
――うさぎに慰められる日が来るとはなぁ……。
生前、犬や猫を飼っていた人に何度かペット自慢をされたことがあるが、確かにこれは癒される。落ち込んでいる時も黙って話を聞いてくれるし、ご主人様に一〇〇パーセントの好意を返してくれるのだ。人間相手ではそこまで単純にはいかない。こういうのをアニマルセラピーとか言うんだったか……?
というか、ピピはまだペットですらないけど。
――そうだな、ずっと落ち込んでても仕方がないよな……。
アクセルは優しくピピを撫でた。
大丈夫、兄ならいつかきっと許してくれる。今更愛想を尽かすくらいなら、もっと早い段階で不仲になっていたはずだ。自分で言うのも何だが、今まで結構な迷惑をかけてきたのだから。
兄はいつか必ず会いに来てくれる。そう信じて待っていよう。
「……ありがとう、ピピ。きみがいてくれてよかった」
「アクセル、すき」
「わかったよ。俺もピピが好きだ」
「ぴー」
ピピが嬉しそうに耳をパタパタさせた。
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