223 / 2001

第223話

「どうした、ピピ? 散歩でも行きたいのか?」 「ぴー」 「……違う? じゃあ肉まんの味見か? もう少しでできるから、いい子で待っててくれ」 「ぴー……」  そうじゃない、とピピは首を振り、再びキッチンを出て行く。何をするのかと思ったら、今度は暖炉用の丸太を咥えて戻ってきた。それをアクセルの足元に置き、期待した目でこちらを見上げる。 「なんだ、丸太で遊びたかったのか。じゃあ肉まんできてから遊ぼうな」 「ぴー!」 「……え、それも違うのか? じゃあ何で丸太持ってきたんだよ?」 「ぴー」  ピピがガリガリと丸太の端を齧る。しばらくそれを見ていたら、徐々に角が削れて丸くなっていった。ちょっと面白かった。 「ぴー」  お前もやれと言わんばかりに、鼻先で削りかけの丸太を押しつけてくる。  アクセルは屈んで丸太を手に取り、ピピと交互に見つめた。 「木彫りをやって欲しいのか?」 「ぴーぴー」 「そうか……俺にできるかな」  薪割り程度なら朝飯前だが、木彫りなんてやったことがない。どうやって作ればいいのかわからないが、とりあえず適当に削ってみるか……。  アクセルは蒸かした肉まんを火から下ろし、皿に盛ってテーブルに置いておいた。  次いで短い小刀を手にし、丸太を持ってベランダに出た。何を作るかなぁ……と頭を捻っていたら、ピピが期待するようにこちらを見てきた。  ――あ、そうか。  近くにちょうどいいモデルがいるじゃないか。アクセルは足下に寄り添ってくるピピに話しかけた。 「なあピピ、ちょっとそこにいてくれないか?」 「ぴ?」 「うさぎの木彫りを作ってみようかと思って。最初だからあまり上手くいかないかもしれないけど……」 「ぴー!」  任せろ、と胸を張るやいなや、一旦部屋に駆け戻り、作ったばかりの寝床を引っ張ってくる。それをベランダに敷き、ごろんと寝そべり始めた。自分はここにいるから、好きなだけモデルにしてね……と言っているみたいだ。 「ありがとう、ピピ」  アクセルは早速小刀を構え、丸太の端から少しずつ削ることにした。

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